奨学金は学生ローンなのか?
奨学金は学生ローンではありませんが、返還の義務があるので借金と何ら変わりがありません。もし返還が滞ってしまった場合、延滞金もかかりますし、そのまま放置すれば督促や債権回収業者による取り立てもあります。
“奨学金”という響きから気軽に借りてしまう方も多いですが、欧米のような贈与タイプとは違いますので、貸与を受ける際にはきちんとした認識を持っておく必要があります。
返還残高は大学4年間で数百万円になるのが一般的ですし、大学院まで進学する場合は1千万円以上になることもあります。昔とは違い、今は大学を出ても正規で就職できないケースもあるので、卒業後、奨学金を返還できなくなるリスクが存在します。
仮に、1千万円の住宅ローンを組んだ場合、返済が困難になってきたら家を売却して賃貸へ移ることもできますが、奨学金で大卒の学歴を得てもそれ自体には何の資産価値もありません。
万一、就職に失敗した場合には多額の債務だけが残ってしまうことになり、就職難で非正規雇用が増加している昨今、そのリスクは実際に高い傾向にあります。
利息のかかる第二種奨学金の貸与残高が急増中
日本学生支援機構の奨学金には2種類あり、「第一種」なら利息はかかりませんが、「第二種」の場合は利息がかかります。
利率は高くても3%以内ですし、実際にはもっと低い利率ですので、消費者金融である学生ローンと比較すると借りやすくはありますが、元金が大きい分、低利といえども利息負担分だけで高額になりがちです。
仮に、1,000万円を年2%の利率で借りたとすると、利息分だけでも年間20万円がかかります。返還完了までに10年、20年かかるとすると、利息だけで数百万円かかってしまう計算になります。
この第1種と第2種の違いでいいますと、ここ10年来、無利子である「第一種」の利用者と貸与額の割合についてはあまり変化はありません。
一方で、有利子である「第二種」の利用者は大幅に伸びてきています。これは親のサラリーマン年収が下落しているのに加え、大学にかかる費用も高額化してきてますので、有利子であっても奨学金に頼らざるを得ないのが実情となっています。
第二種貸与額は、平成10年度の時点では650億円程度でしたが、平成24年度にはその10倍以上となる8,496億円にまで急激に増大しており、この原資は既卒者による返還のほか、民間金融機関からの借入金などでも資金調達がされています。
民間の金融機関や投資家からみれば、奨学金は利息という利益を生むビジネスの対象ですので、この有利子である第二種の割合が急激に増加してきたことが、奨学金の学生ローン事業化ともいわれる要因といえるでしょう。
また、大学側にとってみても、奨学金制度がなければ進学を断念する学生が多くなり、必要な学生数を確保できませんので、大学経営という事業が成り立たなくなってしまいます。加えて、私立大学が次々に廃校する事態ともなれば、官僚にとっても天下り先の確保ができなくなってしまうため、退職後の収入に不安が生じることになります。
学生のみならず、様々な要因で第二種奨学金の利用者が急増していますが、多額の借金を背負った若年層が急増してきたことで社会問題化してきています。
少子化で誰もが大学に入れる全入時代となった今日、多額の奨学金を借りて卒業しても、必ずしも正規で就職できるわけではありません。
大学卒業後、社会人のスタート直後から多額のローンを抱え、中年になるまで何十年も返済し続けるよりも、高卒でそのまま就職して貯蓄をはじめた方が、かえって充実した人生を送れる可能性もあります。
消費者金融の場合、50万円程度でしたらボーナス一回~二回分で十分に返済が可能な金額ですし、保証人が不要ですので、万一の状態となった場合でも家族や親戚に迷惑がかかることはありません。
けれども、奨学金の場合は数百万円単位の残高になるのが一般的ですし、返済期間も10年以上に渡るのが一般的です。連帯保証人や保証人も必要になりますので、万一の場合は自分の失敗だけではすみません。
最低限、利息は総額でいくらかかるのか、そして何歳までいくら払い続けなくてはいけないのかを確認してから貸与を受けることをおすすめします。